マネジメント・リーダーシップ

彼女が手伝わない理由

年齢や性別、国籍を超えて有志が集う勉強会があります。
毎回6-7名の参加。平日、仕事を終えての参加となるため、終了はいつも21時を過ぎてしまいます。
会場はご厚意でお借りしている個人のスペースの為、「立つ鳥跡を濁さず」ではありませんが、いつも綺麗に片づけてと思っています。

ところが、毎回、会が終るとさっさと帰り支度を済ませ、コートを着込み、カバンも手に持ち、全員が揃うのをただ立って見ているAちゃんがいます。
CさんもEさんも、皆、その時自分ができることをしているのですが、Aちゃんはいつも見ているだけ。
あまりにも帰り支度が早いので帰りを急いでいるのかと思い、「Aちゃん、急いでいるなら私たちに遠慮しないで先に帰っていいよ。」と声をかけました。
しかし、「いえ。別に急ぎませんから。」と笑顔で言うのです。「手伝います」でもなく、ただ、黙って立っているだけ。
毎回こんな様子なので、誰からともなくAちゃんについて、「ちょっと非常識よね」となってしまいました。

昨日も、Aちゃんはいつもの通り、勉強会が終わるや否や、いの一番に帰り支度を整え、出口でカバンを持ってスタンバイしました。
私達が全てを片付け終えるのに10分ほどかかるその間、特に話をするでもなく、ただ黙って立って見ています。
会場をご提供いただいている方からも、「Aちゃん、どういうつもりなのかしらね。若い子は何考えているか分からないわね。」と言われてしまいました。
駅までの道すがら、Aちゃんに誰も話しかけません。気まずい雰囲気が流れます。ところが、Aちゃんはあまり気にしている様子がありません。それがますます、他のみんなのイライラを募らせます。
「このままではマズい」 そう思い、Aちゃんにこっそり聞いてみました。

「Aちゃん。帰りのお片付けなんだけど、Aちゃんも手伝ってくれると助かるんだけどな。」(一応、私も大人なので、「どうして手伝わないの?」とは言いません。)
すると、Aちゃんから驚くべき返事が返ってきました。
「え? 私もお片付けをさせていただいていいんですか? スペース狭いし、皆さん手際よく分担されているので、私は邪魔かと思って、いつも控えていたんですけど。」

もう、驚き桃の木山椒の木 とはこのことです。彼女はふざけているわけでもなんでもなく、本心から言っているようでした。
「皆さんが普通に話されている常識的な事が私は分からないことが多いので、勉強会の時もいろいろご迷惑かけているし、せめて夜遅くなってい急ぐ時間に、私が手を出して却って遅くなるようなことがあってはいけないと思っていました。お手伝いさせていただけるんだったら、教えていただけますか。」

もう、笑ってしまいました。そういうことだったのね。

これが数年前の私だったら、「思ってるんだったら『私に何かできることはありますか?』とか『お手伝いしたいので教えていただけますか』とか、自分で言ってくるのが常識でしょ。思ってるだけで口にしないのは、思っていないのと一緒なんだから!」と冷たく突き放したでしょう。
しかし、多少なりとも大人になった私は、そんな事よりも、「彼女に手伝う気持ちがちゃんとあった」という、その事実だけで充分だと思いました。その気持ちがあるならば、あとはこちらが導いてあげればいいんだもの。
自分から言わないのはおかしいとか、そんな小さな事にこだわる方がおかしいというものです。

わたしたち大人組とは20歳以上も年下のAちゃんからしてみると、どうして良いのかわからずに、せめて邪魔にならないようにと彼女なりに気を遣っていたのですね。親子ほども年の違うAちゃんに、もっと私たちが気を配ってあげれば良かったと、逆に反省しました。

これって、職場でも同じようなことがあるのではないでしょうか。
メンバーから言ってくるのが当たり前とか、自主的に働きかけるのが普通とか。もちろん、それに越したことはないですが、最初の一歩はどちらから歩み寄ってもいいではないですか。
「なんで手伝わないんだよ!」と糾弾するのではなく、「手伝ってもらえるかな」とこちらから声をかければいいだけのこと。
大切なのは、どんな結果を手に入れたいか。そこに至るために、どちらから始めなければいけないという決まりはないのですから。

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