誰だって変わることができる

イライラが止まらない

メンバーの何気ない言葉にカチンときたマネージャーのYさん。
「『僕らのことほっといて、昨日はさっさと帰っちゃって』て、Sさんがボヤいていましたよ。」
こう言われてYさんは自分でも不思議なほどに頭に血が上りました。
「ほっといて、って、ちゃんと理由を言ったじゃないか。なんなんだ!甘えるのもいい加減にしてほしい!!」
心の中でそう叫んだYさんでしたが、何とか口に出すことは抑えることができました。

その後、一日を他部署とのミーティングやお客様訪問などで忙しく過ごし、夕礼の時間になってメンバーと顔を合わせた時、朝の不愉快な思いがどこからともなく湧き上がってきました。
イライラ、イライラ。
朝のカチンを未だに引きずっている自分に驚きながらも、湧いて出てくるイライラ感をどうすることもできないYさんは、自衛の策として黙っていることにしました。
下手に口を開けば乱暴な言い回しになってしまいそうだったからです。

その日はさっさと仕事を切り上げて会社を出たYさんでしたが、なぜこうもイライラするのかが自分でも不思議でした。
「一体何に、こうも自分はイラついているのだろう・・・」
Sさんはいつも「〇〇さんがこう言っていた」という言い方をして、本当は自分もそう思っているのにズルい言い回しをする、そのSさんにイラついているのかも。
そう考えたYさんでしたが、すぐにそうではないと気がつきました。
歩道を歩いているYさんの横を猛スピードで走り抜けていった自転車にムカッときたのです。
さらには電車にお年寄りが乗ってきたにもかかわらず、堂々と優先席に座りながらスマホに夢中になって席を譲ろうとしない若い女性にもカチンときました。
つまり、些細なことにもムカッ!カチン!イラッ!となってしまうイライラ病にすっかり陥っている自分に気がついたのでした。

どうしちゃったんだろう・・・
考え込むYさんでしたが、深呼吸をしてセルフコントロールに努めてみました。
いろんなことにイラついているけど、そもそも理由は、根本は何なのか・・・
繰り返し自問自答しながら行きついた答えは・・・
「『メンバーは僕が〇〇をしてくれて当たり前』と思っている、それが僕は気に入らないんだ」ということでした。
けれども、どうして気に入らないんだろう・・・
更に深くセルフコーチングをしていったYさん。
「こんなに一生懸命やっている僕に対して、メンバーはもっと感謝してもいいんじゃないかと思っている。彼らは僕に対して感謝が足りないと僕は思っている。僕は彼らに感謝を求めているんだ。」
と、自分が感謝欠乏症に陥っていることに気がついたのです。

なんてこと!
メンバーからの感謝を求めてイラつくなんて。
それらが波及して、どうでもいい事にまで過敏になって神経を逆なでているなんて。

イライラの真因にたどり着いたYさんは、自分が負のスパイラルに陥っていることを自覚し、学んだとおりに自分の考えを方向転換してみました。
「僕は彼らに色々と“してあげている”と思っている。そうじゃなくて、僕は彼らに色々と“させてもらっている”。
僕は彼らに感謝を求めている。感謝は要求するものではなくて、結果としていただけるもの。
マネージャーは自分が人間として成長することができる役割で、その役割を自分はもらっている。だから“してあげている”ではなく“させてもらっている”んだ。
僕の人となりがまだまだ未熟だということを気づかせてくれた出来事だったんだ。」

少し気持ちが落ち着いたYさんは、その後、「無」になることができる靴磨きに励みました。
靴を磨いている時は、不思議と頭から雑念が消え去って無になることができるのです、
そうやって暫く靴磨きをしているうちに、すっかり心は落ち着き、しつこくまとわりついて離れなかったイライラもどこかへ消えてなくなりました。

久しぶりに強烈なイライラに襲われたけど、セルフコントロール、セルフコーチングと無の時間を持つことで何とか切り抜けることができたYさん。
メンバーに感謝を求めていた自分に「まだまだだなぁ、俺は」と呟くと共に、今朝のちょっぴり苦い出来事からこのことに気がつけたことに、「1mmは成長したかも」と、全てに感謝したのでした。

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