その他

信頼が失われるとき

夜、自宅へ戻るとある申込書がテーブルの上に置いてありました。
父が不自由な手で書いたと思われる文字。
「これ、何?」
私が尋ねると、
「〇〇〇の人が来てね、『説明聞きました』というサインをしてくれと言うから書いた。申込書じゃないから。」
と答えます。
しかしそれはどこからどう見ても、同業各社で争奪し合っている、サービス内容変更に対する申込書のお客様控えです。
しかも、それは私が契約者となっているサービスですが、「申込者は契約者の同意を得たうえで申し込みます」の欄にチェックがされています。

目が悪い母には小さい文字は見えなかったのでしょうし、認知が進む父には理解が難しかったのかもしれません。
しかし、説明をしている段階で営業の方はそんなことには容易に気づくはず。
にもかかわらず高齢の両親にサインをさせて申し込みを取っていくそのやり方に、無性に腹が立ちました。

世の中で高齢者を対象にした詐欺や詐欺まがいの問題が多発しており社会問題化していますが、ついに我が家にもそれがやってきたかというところです。
そのサービス提供会社は大きな会社です。
しかし、そのような営業をするのですから「ちゃんとした会社」ではないのでしょう。
その企業への私の信頼は一気になくなり、失望に近いものがありました。

本当に良いサービスであると心から信じ、だからお客様へそれを勧めたいんだという思いがあるのなら、年老いた二人から申し込みを取るのではなく、正々堂々と私が戻るのを待って契約に臨むのが筋です。
そうではなく、私が留守だと知りながら両親から契約を取るというのは、その会社都合(契約を取りたいだけ)であることが透けて見え、更には相手の信頼を一気に失うという行為をしているに他ありません。

本当に心から相手のためのなると思うこと、相手の役に立つと信じることであれば、どんな状況であれ自信を持って堂々と行動すれば良いのです。
もしそこにほんの一瞬でもためらいや戸惑いがあるのだとしたら、それはお客様のためではなく、売る側の利己主義が勝っているからに他ありません。
そういった利己主義、会社都合の行為は遅かれ早かれお客様に伝わり、ビジネスにおいてもっとも大切な信頼を失うことにつながるのです。

申込書にサインしてしまった父を危うく責めそうになった自分を戒め、学びの機会を得たのだと、どんな場合にも利他を大切にしなければいけないと、このケースは私に警鐘を鳴らしているのだと心に言い聞かせたのでした。

タイトルとURLをコピーしました