組織開発

お客様ファーストとスタッフの犠牲

お客様ファーストで評判のお店。
「お友達が「すごくいい!」って言うから、今度行こうと思うんだけど、一緒にどう?」
友人の誘いでそのお勧め店に行ってきました。

応対してくれたのは店長さん。
お店のポリシーを誰よりも体現している「想いの塊」のような女性です。
他にもスタッフの方が数人。とても丁寧にお客様へ対応しており、評判通りだなと思ったのですが・・・

私はとても違和感を感じました。
それは店長さん以外のスタッフの皆さんは、全く楽しそうではないのです。
いやいや仕事をしているとか感じが悪いとか、そういうことではありません。
ただ、イキイキしていないというか、嬉しそうでないというか、そこから感じられるオーラに彼らの幸せを感じないというか、感覚的なものですが、とにかく違和感を感じたのです。

そのお店に行ったことを友人のMさんに話したところ、「そのお店、知ってるわ~」と言うではありませんか!
「どうだった?暫く行ってないんだけど。」
Mさんの問いに、サービスは評判通りとても良かったこと、店長さんが想いの塊だったこと、それに反して他のスタッフさんに違和感を感じたことなど、その時感じたことをそのまま伝えました。
「あぁ、そう。彼女、店長になったのね。私が最後に行ったのは5-6年前でね。あそこのオーナーさんもよく知っているんだけど、彼女が店長だったらスタッフさんは大変かもね。」

Mさんの言葉に私はその理由が聞きたいと思い、次を促しました。
「彼女はオーナーの想いを誰よりも理解していて実践もしていて、それは悪い事じゃないんだけどね。彼女にとって、それは幸せなことだし何ら問題はないんだろうけど、スタッフにも強要するみたいなのよね。彼女の下についたスタッフはなかなか続かないとか揉めるとか、オーナーがこぼしてたんだけど、どうして店長にしたんだろう。他にいなかったのかなぁ。その違和感、間違っていないと思う。きっと、スタッフはみんな疲れてるんだと思う。」

つまりMさんの話を要約すると、すべてにおいてお客様ファーストが善とされ、そのためにはスタッフが自己犠牲を払うことも当然とされていて、自分を押し殺したり我慢してまでお客様に尽くさなければならないのかと疲れてしまうスタッフが多いということです。

「その手の専門家よね? 由佳さんはどう思う?」
Mさんの質問に「そりゃぁ、それは変だよね。間違ってる!」と私は答えました。

お客様を大切にすることは当たり前のことですし、そこに異論はありません。
しかしそれを成すのはスタッフであり、本来、「成したサービスによってお客様が喜ぶ・幸せを感じることがスタッフの喜び・幸せになる」のが王道です。
お客様の喜び・幸せのためにはスタッフが我慢する・多少の犠牲は仕方ない・それが全てはお客様のためということ、という考え方は変! というか間違っています。
そんなサービスは続くはずがありません。
スタッフが、そこで働く人たちが幸せでないのに、幸せでない人が成すサービスが他人に幸せを届けられるはずがありません。
自分が成した行動で相手が喜び、相手の喜びが自分の喜びに通じる。それが結果的にお客様ファーストというサービスとなるよう、店はそのあり方、考え方、関わり方を考えるべきなのです。
話は反れますが、お世話になっているケアマネさんがよく仰るのです。
「介護保険サービスは、介護を受ける人ではなく家族のために、家族の心身のケアのために使われるべきだと私は思うの。ご家族が元気で幸せなくって、どうして介護する人に幸せを届けられる?だから娘さん(私の事)はご両親のために我慢したり犠牲を払うんじゃなくて、まず自分を大切に考えて、それからご両親を考えるようにしてね。」
両親ファーストで走り続けて疲れて心がギスギスしてきた私に、ケアマネさんがかけてくれた言葉に私は目が覚めたのでした。

「やっぱりそうだよね。オーナーに言っとくわ。けどさ、そんな風にはき違えて社員やアルバイトに無理を強要しているところって多いよね。どうしたもんだろうね。」

Mさんの呟きに苦笑いした私です。
「そうね。私たちの力が及ばないというか、働いている人たちがもっと喜びや幸せを感じられるよう、もっと私たちが頑張らないといけない。頑張るわ!」

お客様ファースト。お客様第一主義。
言い方はそれぞれですが、それらはサービスを提供する側が大切にされ、幸せであって初めて成せることであって、彼らが犠牲になって行うことではありません。
お客様を大切にするのであれば、まず最初にすべきは社員を、スタッフを大切にすべきであり、お客様の喜びを自分たちの喜びに変換できるよう、精神論や建前ではなく、心底そう思うことができるように組織は、リーダーは丁寧にその取り組みをしなければなりません。

「あの店長、すっごく手強いと思うんだけど、もしオーナーが由佳さんに頼みたいって言ったら引き受ける?」
「オーナーに会ってみないとわかんない。けど、あの店長だってもっとハッピーになるには、スタッフがハッピーな方がいいに決まってるからね。」
Mさんの問いに、私はいつものように答えました。

あなたのチームはお客様を大切にするためにどんな取り組みをしていますか?
お客様の喜びがメンバーの喜びに犠牲なく転換されていますか?

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