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How toはHow toでしかない

友人のSNSにこんな投稿がありました。
「整体院にいらっしゃった方にセルフケア法を教えると
『先生、そんなの教えて大丈夫?先生の仕事なくなっちゃうよ。』
と心配されることがある。大丈夫です。
(中略)
シェフがレシピを一般人に教えても、レストランは困りません。」

友人の投稿に座布団10枚、「超いいね」を10個送りたい気持ちでした。
私もお客様のみならず、友人や知人にちょっとしたコツ、例えば「自分たちでできる有意義なミーティングの進め方」とか、色々なHow toをお伝えすることがたくさんあります。
同業の仲間から「ちょっとプログラムのアドバイス欲しいんだけど」と相談されて、まるまるプログラム案を考えてそのまま伝えたこともあります。

「え~。無料でやってるの? 仕事なくならない?」
とやはりこんな反応が返ってくることがあります。
でも大丈夫です。

セルフケア法もレシピもミーティングの進め方もコーチングのスキルも、所詮は全てがHow toであり、How toはHow toでしかないのです。
だって、世の中にはHow to本が星の数ほど溢れていますよね。ネットの情報も含めると、私がお伝えしたことは、それらのどこかにあるでしょうし、そっくりそのままでなくてもつなぎ合わせればそれらしくなるというものです。

けれども、どんなにHow toを丁寧にお伝えしても、例えばワークショップで行うちょっとした仕掛けや「ここでこんなコメントを差し入れて」という、ある意味種明かし的なものを伝授したとしても、やはりそれはHow toの伝授であってそれ以上でもそれ以下でもないのです。

私の仕事で言うと、どんなスタンスでプログラムに取り組んでいるか、自らがどんな経験を踏まえていてどんなネタ(ケーススタディ)を持っているか、How toだけでは伝えきれないその場の生の空気をいかに感じ取り、その一瞬一瞬に相応しい適時適切なコメントや反応、その人、その場に応じた最善のコトを行えるか。これらはHow toで伝えきれることではなく、つまりはプロの整体師しかり、シェフしかり、やり方を伝えたからと言って彼らの域に誰もが到達できるかと言えばそうでないのと同じなのです。
そして最も大切なのは「スタンス」だと思います。
シェフであっても整体師であっても、どんなに優れた技術があってもそのスタンスに歪みや黒いものがあっては、結局のところはその技術に不純物がべったりと張り付き、サービスを受けた側には何かしらの違和感・不快感を感じようというものです。
私達、人材開発(HD)・組織開発(OD)に携わる者も同様に関わる側(私達)のスタンスが最も問われる仕事であり、「私が変えてあげる」「私が手伝ってあげている」的なHDOD支援者は全くのNGです。(でも、実はとっても多いのです。こういうコンサルさんが・・・)
だって、あくまでも変わるのも、成長するのも、進化するのも、その人(相手)が自分で行うことであり、私達はそのほんの一部をサポートしているにすぎないからです。
サポートするという表現もおこがましくて、私は好きではありません。
サポート(支援)だなんて、実際は違うのですから。
(それでも仕方がないので私は『お手伝い』という表現を使っています。)
その人が気づいたり、頑張ろうと思ったり、振返ったり、新たなことを考えついたり、そのちょっとしたきっかけづくりをしているにすぎず、気づくのも頑張るのも振り返るのも考えるのも、全てはその人自身。私たちはあくまでもきっかけに過ぎないのです。
そのスタンスを忘れて「自分たちが変えてあげている」「自分たちが成長させてあげている」と思っているOD/HD支援者は、相手を自分たちコンサルタントへの依存状態に導いたり、かえって好ましくない結果を招いてしまうのかもしれません。

先のSNS投稿の友人も、整体師としての腕前を私は知りませんが、人として自分を磨くそのスタンスには本当に頭が下がります。
「結局はそこなんだよね」と私も思います。
もちろん、最低限、一定以上のHow toを身に着けることは必要です。
しかしそこから先は、やはりスタンス、あり方が重要。
How toはあくまでもHow toでしかなく、ですからそれらを変に隠したりもったいぶって出し惜しみするのではなく、かえってドンドンと知ってもらい、それぞれの人がそれぞれに上手く活用できればそれに越したことはないのでしょう。
それよりも、それらHow toを誰がどのようなスタンス、考え方のもとにどう扱うかで、素晴らしくもなり、どうしようもなくもあり、結局磨くべくは自分自身のあり方なのだということを常に肝に銘じておくべきなのですね。

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