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夕陽を見た

コンサルを終えて、最寄り駅まで車で送って頂くその途中、広大な畑の向こうに沈んでいく大きな大きな夕陽が見えました。
それは茜色に燃え落ちる、けれどもどこか優しく温かみを感じさせる、朝日のような力強さとは異なる、包み込むような柔らかさを持った夕陽でした。

「すごーい。綺麗な夕陽!」
子供のようにはしゃいだ声を出した私に、運転席でハンドルを握るAさんは残念そうに呟きました。

「僕は夕陽を見た記憶が、いつ以来なのか、憶えていません。」

傷病休職明けのAさんは、そんな余裕はない、辛い日々を送っていました。

「こんな絶好のロケーションに工場があるんですから、毎日、夕陽を見て元気をもらわない手はないですよ。
どんなに忙しくてもトラブっていても、ほんの一瞬、夕陽を見ましょうよ。
だって、こんなに綺麗なんだもの。生きてて良かった~、と思えるくらいに綺麗な夕陽なんだもの。」

そう言って隣を見ると、Aさんの目にキラリと光るものが見えました。

「そうですね。それくらいの余裕持たないと、またやられちゃいますね。そうします。」

大自然の前には人間なんてちっぽけな存在。
仕事が大変とか、仲間が協力的でないとか、お客様が無理難題を言ってくるとか、大きな問題ではありません。
生きている、生かされている、それだけでもう、本当に素晴らしいことなのですから、それ以外の事は、美しい夕陽をただ眺め、大きく深く呼吸をして、それからまた考えれば良いのです。
自分を痛めつけるほどに悩んだり追い込んだりする必要はありません。
ただ、心を空っぽにして自然の美しさを味わい、エネルギーを頂き、それからまた、どっこいしょと腰を上げれば良いのです。

あなたは夕陽を見ていますか?
空を見上げていますか?

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